人は「商品」を買っているのではない。「変化した自分」を買っている

目次

読者が思わず「未来を試着」したくなる文章のつくり方

商品説明が上手な人ほど、売れない文章を書くことがあります。

なぜなら「商品について説明すること」と「欲しくなる理由を伝えること」は、別の仕事だからです。

これは僕がコピーを書いていて、何度も感じてきたことです。

「メリットを書きましょう」だけでは足りない

コピーライティングを学ぶと「商品の特徴ではなく、メリットを書きましょう」と教わります。

たとえば「この掃除機は1.2kgです」

これは特徴。

そこから「軽いのでラクに掃除できます」と書けばメリットになる。

確かに、一歩よくなっています。

でも僕は、ここでもう一歩、先まで考えます。

「で、それによって、この人の生活はどう変わるの?」

人が欲しいのは「軽い掃除機」ではない

たとえば、小さな子どもがいる家庭なら、欲しいのは、1.2kgの掃除機ではないかもしれません。

「子どもが食べこぼしても、サッと出して掃除できる」
「わざわざ重い掃除機を引っ張り出さなくていい」
「掃除への心理的な面倒くささが減る」

その結果、部屋が少しきれいになる。

イライラが少し減る。

子どもに「またこぼしたの!」と怒る回数まで減るかもしれません。

ここまで行くと、掃除機の話をしているようで、実は、その人の暮らしの話をしています。

特徴→メリット→「変化」

僕は文章を書くとき、頭の中でよく、この3段階に変換します。

特徴

メリット

変化

たとえば、オンライン講座なら「動画が100本あります」は特徴。

「好きな時間に学べます」はメリット。

では、その先にある変化は?

「会社から帰ったあと、30分ずつ学び、自分で仕事を取れるスキルが身につく」かもしれません。

さらに、その人によっては「会社だけに収入を依存しなくていい安心感を持てる」かもしれません。

人が本当に欲しいものは、100本の動画ではなく、100本を見たあとの自分なんです。

ドリルを買う人は「穴」が欲しい?

マーケティングでは、有名な考え方があります。

「人が欲しいのはドリルではなく、穴である」

商品そのものではなく、商品によって得られる結果を見よう、という話です。

ただ、コピーを書くなら、僕はさらに先まで考えたいです。

「その人は、なぜ穴が欲しいのか?」

壁に穴を開けたい → なぜ?

棚を取り付けたい → なぜ?

子どもの写真を飾りたい → なぜ?

家族が集まるリビングを、もっと好きな場所にしたい。

ここまで来ると、ドリルのスペック表からは、絶対に見えなかった景色が出てきます。

「ベネフィット」という言葉だけで終わらせない

マーケティングでは、こうしたものを「ベネフィット」と呼びます。

もちろん、知っている方も多いでしょう。

でも、ここに落とし穴があります。

「ベネフィットを書こう」と考えた瞬間、また売り手目線になることがあるんです。

「時間を節約できます」
「売上アップにつながります」
「理想の未来を実現できます」

確かに、ベネフィットっぽいですよね。

でも、どこかで100回見た言葉でもあります(笑)

読者からすると「はいはい、なるほど」で終わることが多いんです。

抽象的な未来では、人は自分を投影しにくい

「自由になれます」より「平日の昼間に、混んでいない映画館へ行ける」のほうが、景色が浮かびます。

「時間に余裕ができます」より「子どもが寝たあと、仕事のメールを開かずに映画を一本観られる」のほうが、生活が見えます。

「売上が上がります」より「月末に通帳を見ながら『今月、大丈夫かな……』と計算する時間が減る」のほうが、感情まで見えます。

人は、抽象語では未来を体験しにくいです。

だから僕は、ベネフィットを、できるだけ「場面」に変えます。

読者の頭の中に「未来の試着室」をつくる

服は、試着できます。

車も、試乗できます。

でも、講座やコンサルティング、サービス、電子書籍、情報商品などは、購入前に完成後の未来を、実際に試すことができません。

だから文章が、代わりに試着させるのです。

「これを手に入れたら、自分の日常はどうなるんだろう?」

その未来を、読者の頭の中で、一度体験してもらう。

僕はこれを「未来の試着室」くらいに考えています。

人は商品を買う前に、頭の中で一度使っている

たとえば、旅行サイトでホテルを見るとき、あなたは、部屋の広さやベッドのサイズだけを、見ているでしょうか?

露天風呂の写真を見て「朝ここに入ったら気持ちいいだろうな」

窓から海が見える写真を見て「ここでコーヒー飲みたいな」

そんなことを、想像していませんか?

まだ予約すらしていないのに、頭の中では、もう旅行が始まっています(笑)

文章も同じです。

買う前に、使ったあとの自分を想像できるほど、商品は「自分ごと」になっていくのです。

だから「あなたの未来はこうなります」だけでは弱い

ここで、もう一つ大切なことがあります。

書き手が勝手に、理想の未来を決めないことです。

たとえば、副業を始めたい人が全員「月100万円稼いで自由になりたい」わけではありません。

月5万円増えて、子どもの習い事を、金額だけで諦めなくて済むことが、その人にとっての未来かもしれません。

月10万円増えて、会社で嫌なことがあった日に「最悪、辞めてもなんとかなる」と思えることが、欲しい未来かもしれません。

同じ商品でも、人によって欲しい変化は違います。

ここで「個性学」がつながってくる

五つ星文章術で、僕が個性学を入れている理由も、ここにあります。

  • ある人は「安心」に反応する
  • ある人は「成長」に反応する
  • ある人は「効率」
  • ある人は「評価」
  • ある人は「自由」

同じ副業講座でも、安心を求める人には「収入源が一つではない安心」が響くかもしれません。

成長を求める人には「昨日できなかったことができる自分」が響くでしょう。

自由を求める人なら「働く場所や時間を自分で選べる」かもしれない。

だから「最高のベネフィット」を、一個探すのではありません。

「この人にとっての変化は何か?」を探すのです。

僕が使っている「5回先まで聞く」

商品説明を書いていて、言葉が浅いなと感じたとき、僕は自分に問いかけます。

たとえば「このサービスなら文章が速く書けます」

それで?

時間が浮きます。

それで?

他の仕事ができます。

それで?

仕事を早く終えられます。

それで?

夜は家族と過ごせます。

それで?

仕事をしながらでも、大切な人との時間を犠牲にしなくて済みます。

もちろん、毎回5回である必要はありません。

でも「それで?」を何度か繰り返すと、商品から離れて、人間の欲求に近づいていきます。

AIを使うなら「メリットを10個」だけではもったいない

生成AIに「この商品のメリットを10個考えて」と頼めば、すぐ出してくれます。

便利です。

僕も使います。

でも、そこで終わると、似たような言葉になりやすいんです。

なので、さらに聞いてみます。

「このメリットによって、読者の日常のどんな場面が変わる?」
「購入前と購入後の平日の夜を具体的に描写して」
「安心を求める人と、成長を求める人では、どんな未来の違いがある?」

こうすると、AIが単なる文章生成機ではなく、読者理解を深める壁打ち相手になります。

売れない文章は、商品を主役にしすぎる

「この商品には、こんな機能があります」
「こんなノウハウがあります」
「こんなサポートがあります」

もちろん、これらも必要です。

でも、そればかりだと、文章の主人公が、ずっと商品です。

僕がコピーを書くとき、本当の主人公は、商品ではありません。

読者です。

商品は、主人公が変化するために登場する、道具の一つでしかありません。

「この商品はすごい」から「この人はどう変わる?」へ

売り手は、商品をずっと見ています。

だから、商品の魅力を、一生懸命説明したくなります。

でも読者が見ているのは、商品だけではありません。

その向こうにいる、未来の自分です。

だから、商品説明を書いていて、手が止まったら、一度商品から目を離してみてください。

そして、読者の一日を想像する。

  • 朝起きたとき
  • 仕事をしているとき
  • 家に帰ったとき
  • 家族と話しているとき
  • 寝る前

その商品を使った前と後で、何が一つ変わるだろう?

そこに、コピーの材料があります。

特徴を書く

メリットに変える

そして、もう一歩先へ

そのメリットによって、読者の「どんな日常」が変わるのかを書くのです。

人が欲しいのは、商品そのものではありません。

商品を手にしたあとに始まる「少し違う自分の人生」なのだと思います。

あなたが今、売りたい商品やサービスがありますか?

もしあるなら、商品説明を閉じて、一度次のように自問自答してみてください。

「これを手にした人の、明日の朝はどう変わる?」

そこから出てきた一文のほうが、スペックを10個並べるより、ずっと人の心を動かすかもしれません。

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