売り手が一番伝えたいことと、読者が最初に知りたいことは違う。23社の現場で見る「情報の順番」
ある会社のLPを添削していて、冒頭にあった「私たちの想い」を、ほぼ全部後ろへ移しました。
現在、僕は23社のマーケティングやコピーライティングに関わっています。
LPを見ていると、冒頭から会社の想いを丁寧に書いている原稿に出会うことがあります。
「私たちは○年前に創業しました」
「○○という想いから、この事業を始めました」
「業界を変えたいという使命があります」
「これまで○○人のお客様を支援してきました」
内容はとても素晴らしいんです。
- 経営者の想いもある
- 歴史もある
- 実績もある
嘘偽りのない、大切な言葉です。
でも僕は、こう言うことがあります。
「これ、いったん後ろへ持っていきましょう」
「こんなに大切な文章なのに?」
当然、少し驚かれます。
「会社の理念は伝えなくていいんですか?」
「創業ストーリーは大切じゃないですか?」
もちろん、大切です。
むしろ、僕は企業の背景や経営者の想いは、かなり重要だと思っています。
ただし、問題は内容ではなく「登場するタイミング」なんです。
初対面で20分、自分の話をされたらどうでしょう
たとえば、初めて会った営業マンが、席に座った瞬間から…
「弊社は2008年に創業しまして…」
「創業者にはこんな想いがありまして…」
「社員一同、こういう理念を大切にしておりまして…」
と20分話し続けたらどうでしょう。
悪い人ではない。
むしろ熱心です。
でも心の中では「えっと…僕の話はいつ聞いてくれるんやろ?」となるかもしれません(笑)
LPも同じです。
読者が最初に知りたいのは「あなた」ではない
もちろん…
- 会社のことも知りたい
- 実績も確認したい
- 信用できる人なのかも知りたい
でも、その前に読者が知りたいことがあります。
それは「これは自分に関係のある話なのか?」です。
- 自分の悩みは解決するのか
- 今の問題と関係があるのか
- 欲しかった未来につながるのか
ここが見えないうちに、売り手の歴史を長く説明されても、まだ興味を持つ理由がありません。
そこで、LPの主人公を入れ替える
その原稿では、会社紹介から始まっていた文章を、読者が今抱えている問題から始める形へ変えました。
たとえば「私たちは○年間、企業の採用を支援してきました」からではなく「求人を出しているのに、欲しい人材から応募が来ないと悩んでいませんか?」から始める。
すると、主語が「私たちは」から「あなたは」に変わります。
たったこれだけですが、文章の世界が変わるんです。
会社を消したのではなく「役割」を変えた
ここは、とても重要です。
会社紹介を削除したわけではありません。
後半で、ちゃんと登場してもらいます。
ただし、主人公としてではなく「案内役」としてです。
読者:「こんなことで困っている」
↓
会社:「私たちは、その問題を○年間見てきました」
↓
読者:「本当に解決できるの?」
↓
会社:「これまで○○件支援してきました」
↓
読者:「自分にも合う?」
↓
会社:「こんな方に向いています」
こうすると、会社の歴史も、実績も、理念も、全部生きてきます。
同じ実績でも「置く場所」で意味が変わる
たとえば、冒頭でいきなり「累計1000社を支援!」と言われる。
もちろん「すごい会社だな」とは思います。
でも、読者の問題を提示したあと「その悩みを、私たちはこれまで1000社以上の現場で見てきました」と出てきたらどうでしょう。
同じ「1000社」でも、意味が変わります。
前者は、会社の自慢に見える可能性がある。
後者は「この人たちなら自分の問題を理解してくれそう」という根拠になる。
実績そのものは同じ。
変えたのは、順番だけです。
僕が原稿を見るとき「主語」をチェックする理由
LPやプロフィール文章を見るとき、僕は「誰が主語になっているか」を見ることがあります。
冒頭から…
- 私たちは
- 弊社は
- 私は
- 当サービスは
- 私たちの商品は
・・・という文言が続いていたら、一度立ち止まります。
もちろん「私」を使ってはいけないわけではありません。
でも、読者より売り手の登場回数が多すぎないか?は確認します。
「私」を「あなた」に変えればいいわけでもない
ここで、ありがちなテクニック論にしたくありません。
「私」を全部「あなた」に書き換えましょう、という話ではないんです。
文章だけ「あなたは…」「あなたなら…」と連呼しても、中身が売り手都合なら意味がありません。
大切なのは…
- 文章の視点そのものが、どちら側に立っているか
- 売り手が「何を言いたいか」から構成されているのか
- 読者が「何を知りたいか」から構成されているのか
ここです。
「神話学」は、現場ではこう使う
先日の投稿で「商品を主人公にすると、売れなくなる」という話を書きました。
主人公はお客様。
商品や会社は、主人公が変化するための道具や案内役。
これは、物語を書くときだけの話ではありません。
実際のLP設計でも、まったく同じです。
お客様が困っている
↓
問題の正体を知る
↓
解決策と出会う
↓
不安を乗り越える
↓
行動する
↓
未来が変わる
この流れの途中で、会社や商品が登場する。
つまり、LPそのものを「お客様の変化の物語」として設計するわけです。
商品を売りたい人ほど、商品から書き始めてしまう
これは、現場で本当によく感じます。
- 商品への愛情が強い人ほど、商品について話したくなる
- 会社を大切にしている人ほど、理念を伝えたくなる
- 実績がある人ほど、最初に見せたくなる
気持ちはよくわかります。
でも、売り手が一番言いたいことと、読者が一番最初に知りたいことは違うことがあります。
だからコピーライターは「何を書くか」だけではなく「どのタイミングで書くか」を大切にしているのです。
良い会社紹介は、読者のために存在する
僕は、会社の理念や創業ストーリーが好きです。
そこには、経営者がなぜその仕事をしているのか、という人間性が出るからです。
でも「私たちはこんな会社です」で終わらせない。
- その理念が、お客様にとって何を意味するのか
- その実績が、お客様の不安をどう減らすのか
- その経験が、なぜお客様の問題を解決できる根拠になるのか
ここまでつなげる。
すると、会社紹介が、自己紹介ではなく、読者の判断材料になるのです。
自分のLPを開いて、最初の10行だけ見てください
もしあなたが…
- LP
- ホームページ
- プロフィール
- サービス紹介文
を持っているなら、今日、一度だけ、最初の10行を見てみてください。
そして、主語を数えてみる。
「私」
「弊社」
「当社」
「当サービス」
ばかりになっていないか。
もし多かったら、削除する必要はありません。
一度「この情報、もう少し後ろに置いたほうが強くならないか?」と考えてみてください。
あなたが一番伝えたい話を、後ろへ移す。
一見すると、もったいなく感じます。
でも、読者が「この人の話を聞きたい」と思ったあとに伝えたほうが、ずっと深く届くことがあります。
文章は、何を書くかだけではありません。
誰を最初にステージへ上げるか。
僕がLPを添削するとき、最初にスポットライトを当てたいのは、会社でも、商品でも、経営者でもありません。
そのページを今、読んでいる「お客様」です。
あなたのLPで、最初にスポットライトを浴びているのは、誰でしょうか?


