人が動く物語の主人公は、いつだって「お客様」。神話学から読み解く、売れる文章のストーリー設計
人は「情報」を忘れても「物語」は覚えている。
商品の魅力を説明するのをやめて、「たった一人の物語」を書いたら、文章は急に読まれるようになります。
僕は30年以上、マーケティングやコピーライティングを学び、現在は23社のマーケティングに関わっています。
その中で何度も感じてきたことがあります。
それは、正しいことを書けば、人が動くわけではないということです。
- 商品の特徴
- メリット
- 実績
- 数字
- 根拠
全部大切です。
でも、それだけを並べると「なるほど」で終わることがある。
ところが、そこに一人の人間の物語が入った瞬間「これ、自分のことかもしれない」に変わることがあります。
「月30時間削減できます」と言われても…
たとえば、ある業務効率化サービスがあるとします。
「このサービスを導入すると、月30時間の作業時間を削減できます」
- わかりやすい
- 具体的
- 数字もある
- 悪い文章ではありません
でも、こう書いたらどうでしょう。
「以前は、子どもが寝たあとにPCを開くのが日課でした。
『今日こそ早く寝よう』と思いながら、気づけば23時。
このサービスを導入してから、その作業がほとんどなくなりました。
今は、子どもと一緒に寝落ちしても焦りません(笑)」
伝えている価値は同じです。
でも後者には、実生活の匂い(リアル)が感じられます。
人間は「30時間」ではなく「23時のPC」を想像する
数字は、理解するために使う。
物語は、想像するために使う。
「月30時間削減」なら頭で理解します。
でも「子どもが寝たあと、23時に一人でPCを開く」と言われると、その光景が浮かぶ。
同じ経験がある人なら「ああ、わかる…」となる。
文章が、情報から、自分の記憶につながるんです。
神話学では、主人公は「最初から成功していない」
五つ星文章術では「神話学」も扱います。
神話や物語には、時代や文化を超えて繰り返される構造があります。
その代表が、ヒーローズ・ジャーニー。
ざっくり言えば…
主人公が、日常にいる
↓
問題が起こる
↓
葛藤する
↓
何かと出会う
↓
試す
↓
変化する
という流れです。
ここで大切なのは、主人公が最初から成功していないということ。
「成功しました」だけでは、物語にならない
ビジネスの文章では、つい成功した結果だけを書きたくなります。
「売上が3倍になりました」
「フォロワーが1万人になりました」
「月商100万円を達成しました」
実績としては強い。
でも、読者が本当に知りたいのは、その数字だけではありません。
「その人も、自分と同じ場所にいたのか?」です。
- 何に困っていたのか
- 何を試して失敗したのか
- どんな不安があったのか
- 何がきっかけで変わったのか
ここがあるから、読者は主人公に自分を重ねられる。
僕自身、ホームレスの「結果」だけを書いても意味がない
僕にも…
- 会社倒産
- 離婚
- 4人の子どもとの別離
- ホームレス転落
- そこから約2年で再起
という経験があります。
でも「ホームレスから2年で経営者に戻りました」だけなら、単なる珍しい経歴です。
大切なのは、その途中です。
「もう人生終わった」と思ったこと。
成功哲学を学んできた自分がホームレスになり、何を信じればいいかわからなくなったこと。
神田昌典氏から「焼け野原に立たされたとしても、翌日には紙とペンだけで稼ぎ始める力」という言葉を授かったこと。
そして、小さな仕事から一つずつ積み上げたこと。
人が共感するのは、結果より「途中」にあることが多いんです。
商品を「魔法の杖」にしない
ここで、セールス文章を書くときの重要なポイントがあります。
物語の中で、商品を「これさえ使えば人生が一瞬で変わります!」という魔法の杖にしないこと。
それをやると、途端に広告臭くなります(笑)
商品は、主人公ではありません。
主人公は、お客様です。
商品は、主人公が前へ進むために出会う「道具」や「案内役」
この位置関係を間違えてはいけません。
売り手が主人公になると、読者は観客になる
よくある文章は…
「私たちは○年間研究しました」
「私たちにはこんな実績があります」
「私たちの商品はこんなにすごい」
というもの。
つまり、会社が主人公になっています。
すると読者は、観客席から「へえ、すごい会社ですね」と見ることになる。
でも本当に欲しいのは、拍手ではありません。
行動です。
だから、主人公の席を読者へ渡す。
「これは、あなたの物語です」という構造に変える。
僕が使う「物語の5行」
「ストーリーを書けと言われても難しい」という人もいると思います。
なので、僕ならまず、この5つを書きます。
1. 困っていた
例:「毎日SNSを投稿しているのに、問い合わせはゼロだった」
2. 試した
例:「投稿数を増やし、文章術も学んだ」
3. でも、うまくいかなかった
例:「反応は少し増えても、商品は売れなかった」
4. あることに気づいた
例:「問題は文章量ではなく、誰に何を伝えるかが曖昧だった」
5. こう変わった
例:「発信内容を変えると、必要としている人から相談が来るようになった」
これだけでも、ただ「ターゲットを明確にしましょう」と説明するより、読者は入りやすくなります。
AI時代だから「体験」がさらに重要になる
今は生成AIに「ヒーローズ・ジャーニーでストーリーを書いて」と頼めば、構成そのものは作れます。
だからこそ、重要になるのは、素材です。
- 実際に何が起きたのか
- そのとき何を感じたのか
- どんな失敗をしたのか
- どんな一言を覚えているのか
AIに物語の「型」は作れても、あなたが23時にPCの前でため息をついた、その記憶までは持っていません。
だから、AI時代ほど「自分しか持っていない具体的な場面」が文章の価値になります。
今日、ノウハウを一つ「物語」に変えてみる
もし今日、SNSでノウハウを書こうとしているなら、いきなり解説から始めず、一度こう考えてみてください。
「このノウハウが必要だった人は、どんな場面で困っていた?」
そして…
困っていた
↓
試した
↓
失敗した
↓
気づいた
↓
変わった
この5つに当てはめてみる。
難しい専門用語を増やさなくても、文章が急に「人間の話」になります。
人は、商品を買うために生きているわけではありません。
それぞれ自分の人生を生きています。
だから、商品を物語の主人公にするのではなく、読者を主人公にする。
商品は、その人が次のページへ進むための、一つの道具でいい。
あなたが今売っている商品。
その文章の主人公は「商品」になっていますか?
それとも「お客様」になっていますか?


