音声|人は「説明」では動かない。「物語」で動く。

本記事は、voicyで配信している音声の文字起こしです。音声は以下のリンクからお聴きいただけます。

こんにちは、こんばんは、宮本真愿です。

前回の放送では、人は「得したい」より「損したくない」というテーマで、行動経済学の「損失回避」についてお話ししました。

人間は、必ずしも合理的に判断しているわけではない。

何かを得る喜びだけではなく、何かを失う痛みにも強く影響される。

だから文章を書くときには、「手に入る未来」だけではなく、「何もしなかった未来」も考えてみる。

そんなお話でした。

今日は少し違う角度から、人間の心を見ていきたいと思います。

目次

なぜ、たった一人の体験談が、100の正論より心に残るのか?

突然ですが、みなさん。

学生時代に習った歴史の年号って、どれくらい覚えていますか?

僕はですね……

正直、ほとんど覚えていません(笑)

でも、子どもの頃に読んだ漫画や、感動した映画のストーリーは、今でも覚えていたりします。

不思議ですよね。

歴史の年号は何度も暗記したはずなのに、忘れてしまう。

一方、たった一度しか観ていない映画のワンシーンが、何十年たっても心に残っている。

なぜでしょうか?

実は、ここに人の心を動かす文章の大きなヒントがあります。

今日のテーマは「人は『説明』では動かない。『物語』で動く」

五つ星文章術を構成する5つの要素の一つ「神話学」のお話です。

人間は、昔から物語を通して学んできた

人類は、文字が生まれるずっと前から、物語を語り継いできました。

  • 神話
  • 伝説
  • 昔話
  • 英雄の冒険

こうした物語には、単なる娯楽以上の役割がありました。

  • 何が正しくて、何が間違っているのか
  • 困難に直面したとき、どうすればいいのか
  • 人間は何を大切にして生きるべきなのか

そうした価値観や教訓を、物語を通して伝えてきたんですね。

たとえば「困難に負けず努力することが大切です」と言われても「まあ、そうですよね」で終わるかもしれません。

でも、主人公が何度も失敗し、挫折し、それでも諦めずに立ち上がる物語を見せられると、どうでしょう。

気づけば応援している。

主人公が成功すると、自分のことのように嬉しくなる。

そして「自分も、もう一回頑張ってみようかな」と思ったりする。

同じメッセージなのに、受け取り方が違うんです。

説明は、頭で理解するもの。物語は、感情を伴って追体験できるもの。

もちろん、説明も大切です。

ただ、人の心を動かしたいときには、物語が大きな力を発揮することがあります。

主人公が最初から完璧だったら、面白くない

ここで、ちょっと考えてみてください。

映画の主人公が、最初からものすごく強かったらどうでしょう。

敵が現れる
↓
一瞬で倒す
↓
また敵が現れる
↓
また一瞬で倒す
↓
何の苦労もなく、最後まで勝ち続ける

……まあ、爽快感はあるかもしれません(笑)

でも、感情移入できるかというと、ちょっと難しいですよね。

僕たちが物語に引き込まれるのは、主人公が完璧だからではありません。

むしろ…

  • 弱さがある
  • 欠点がある
  • 失敗する
  • 悩む
  • 逃げたくなる
  • それでも、何とか前に進もうとする

そんな姿に、自分自身を重ねるからです。

ここが、情報発信でも非常に重要なんです。

SNSのプロフィールを見ると…

「月収100万円達成!」
「フォロワー10万人!」
「起業して大成功!」

といった実績が並んでいることがあります。

もちろん、実績を伝えることは大切です。

でも、それだけでは「すごい人ですね」で終わってしまうこともあります。

一方で…

「実は、最初の半年間は誰にも読まれませんでした」
「初めて販売した商品は、一つも売れませんでした」
「何度も諦めようと思いました」

という話があると、どうでしょう。

「えっ、この人も最初はそうだったんだ」と、急に距離が縮まることがあります。

人は、成功そのものよりも、成功までの葛藤に共感することがある。

これが物語の力です。

ヒーローズ・ジャーニーという物語の型

神話学者のジョーゼフ・キャンベルは、世界各地の神話や伝承を比較し、英雄の物語に共通する構造を論じました。

それが、後に映画や物語づくりにも広く応用されるようになった「ヒーローズ・ジャーニー」、日本語で「英雄の旅」
という考え方です。

細かく見ると、いくつもの段階があります。

でも、今日は文章を書くときに使いやすいように、シンプルに考えてみましょう。

主人公は、最初、普通の日常を送っています。

ところが、ある日、問題が起こる。

あるいは、新しい挑戦の機会が訪れる。

でも、主人公は迷います。

怖い
↓
自信がない
↓
できれば今のままでいたい
↓
それでも、何かをきっかけに一歩を踏み出す
↓
そして、困難に直面する
↓
失敗する
↓
挫折する
↓
誰かと出会う。
↓
新しい知識や力を身につける
↓
最後には、以前とは違う自分になって帰ってくる

これが、英雄の旅の基本的な流れです。

ここで大事なのは、主人公が、最初と最後で変わっていることなんです。

物語の本質は、単なる出来事の羅列ではありません。

主人公の「変化」にあるんですね。

僕自身の人生も、一つの物語だった

僕も、33歳のときに会社を倒産させました。

離婚も経験しました。

4人の子どもたちとも離れることになりました。

そして、最終的にはホームレスまで経験しました。

それまで当たり前だと思っていた生活が、全部崩れてしまったんです。

当時は、本当に何をどうすればいいのかわかりませんでした。

「もう一度、人生をやり直したい」

そう思う一方で「いや、今さら何ができるねん……」という気持ちもありました。

そんなとき、僕の人生を変えるきっかけになったのが、言葉の力でした。

マーケティングやコピーライティングを学び、文章で価値を伝える技術を身につけていったんです。

もちろん、勉強した翌日から人生が劇的に変わったわけではありません。

失敗もしました。

思うようにいかないこともありました。

でも、少しずつ、自分の言葉で仕事を生み出せるようになっていきました。

そして今では、コピーライターやマーケターとして、企業や個人の情報発信を支援する仕事をしています。

もし僕が「私はコピーライティングを30年以上研究してきました」とだけ話したら、単なる経歴紹介です。

でも…

会社を倒産させた
↓
すべてを失った
↓
ホームレスになった
↓
そこから言葉の力で人生を立て直した

という流れで話すと、一つの物語になります。

もちろん、苦労話をすればいいという意味ではありません。

大切なのは、何が起こり、何を感じ、何を学び、どう変わったのか。

この変化を伝えることなんです。

読者が知りたいのは、あなたの自慢話ではない

ここで、情報発信をしている人に、一つ注意してほしいことがあります。

ストーリーが大切だと聞くと、自分の人生を最初から最後まで語ろうとする人がいます。

  • 生まれた場所
  • 子どもの頃の思い出
  • 学生時代
  • 就職
  • 結婚
  • 転職
  • 起業

……全部話したくなる(笑)

でも、読者は必ずしも、あなたの人生のすべてを知りたいわけではありません。

読者が興味を持つのは「その物語が、自分とどう関係しているのか?」ということです。

たとえば「私は昔、文章を書くのが苦手でした」という話。

文章を書くのが苦手な読者なら、興味を持つかもしれません。

さらに「何度書いても反応がなくて、毎回投稿ボタンを押すのが怖かったんです」となれば「ああ、わかる」と共感する人もいるでしょう。

そして「でも、文章を書く前に、読者の悩みを一つだけ具体的に想像するようにしたら、少しずつ反応が変わり始めました」となれば「なるほど、自分もやってみようかな」につながるかもしれません。

つまり、自分の体験談を語るときには「この話を通して、読者に何を持ち帰ってもらいたいのか?」を考えることが大切なんです。

セールス文章では、読者を主人公にする

そして、今日の話で、僕が特にお伝えしたいことがあります。

それは「売れる文章では、読者を主人公にする」という考え方です。

ここ、かなり重要です。

自分のストーリーを語るときは、自分が主人公でも構いません。

でも、商品やサービスを販売するときは、読者が主人公なんです。

たとえば、文章術の講座を販売するとします。

書き手は、ついつい…

「私の講座は素晴らしいです」
「私のメソッドは独自性があります」
「私はこんな実績があります」

と、自分の話ばかりしてしまいます。

でも、読者が本当に知りたいのは「この講座を学ぶことで、自分はどう変われるのか?」ですよね。

だから、物語の主人公は読者です。

  • 今、文章が書けなくて悩んでいる
  • SNSを頑張っているのに反応がない
  • 商品には自信があるのに売れない

そんな主人公が、ある知識や方法と出会う。

そして、少しずつ壁を乗り越えていく。

商品やサービスは、その主人公を助ける存在なんです。

言ってみれば、読者が主人公。

商品は、主人公を助ける道具。

発信者は、その旅を支える案内人という関係ですね。

これを理解すると、セールス文章の書き方が変わります。

なぜなら、自分の商品をどれだけ立派に見せるかではなく、読者がどんな未来へ進めるのかを考えるようになるからです。

物語をつくるときに必要なのは、たった4つ

では、実際にどうやって文章に物語を取り入れればいいのでしょうか。

今日は、簡単な方法を一つ紹介します。

次に体験談を書くときは、次の4つを考えてみてください。

まず一つ目。

「以前は、どんな状態だったのか?」

これが物語の出発点です。

二つ目。

「どんな壁にぶつかったのか?」

ここに葛藤が生まれます。

三つ目。

「何がきっかけで変わり始めたのか?」

これが転機です。

そして四つ目。

「その結果、どう変わったのか?」

これが変化です。

たとえば…

「以前は、SNSの投稿を書くのに2時間かかっていました」
「何を書いても反応がなくて、何度もやめようと思いました」
「でも、読者を一人に絞って書くようにしたんです」
「すると、少しずつコメントをもらえるようになり、投稿することが楽しくなりました」

どうでしょう。

これだけでも、小さな物語になりますよね。

難しい技術は必要ありません。

大げさな演出も必要ありません。

「以前の自分」と「今の自分」をつなぐ、変化の道筋を見せる。

まずは、これだけで十分です。

AIは物語をつくれても、あなたの人生を生きてはいない

そして最後に、AI時代のストーリーテリングについても触れておきたいと思います。

今のAIは、物語をつくるのも得意です。

感動的なストーリーも書けます。

ドラマチックな展開も考えられます。

でも、僕はここに大きな違いがあると思っています。

それは、AIは物語を生成できても、あなた自身の人生を経験したわけではないということです。

  • あなたが失敗したとき、何を感じたのか
  • 誰に、どんな言葉をかけられたのか
  • どんな夜を過ごしたのか
  • 何をきっかけに立ち直ったのか

その細かな感情や情景は、あなた自身が持っているものです。

だからAIに「感動的なストーリーを書いて」と丸投げするより、自分の体験を具体的に伝えて「この体験が読者に伝わるように構成を整理して」と頼むほうが、僕はいいと思っています。

AIには構成を手伝ってもらう。

でも、物語の材料は自分の人生から持ってくる。

これが、AI時代の文章術で大切な考え方の一つです。

あなたの人生にも、必ず物語がある

さて、今日のお話はいかがだったでしょうか。

人の心を動かす文章には、物語が大きな力を発揮することがあります。

その理由は、物語を通して、読者が主人公の葛藤や変化を追体験できるからです。

そして、物語を書くために、特別な人生を送っている必要はありません。

会社を倒産させた経験がなくてもいい。

ホームレスになった経験がなくてもいい。

劇的な成功体験がなくてもいいんです。

  • 小さな失敗
  • ちょっとした気づき
  • 誰かに言われた一言
  • 昨日までできなかったことが、今日できるようになった経験

そんな日常の中にも、物語はたくさんあります。

大切なのは「何が起こったか」だけではなく、「その出来事によって、自分がどう変わったか」

そこに、読者の心を動かす種が隠れています。

そして、商品を販売するときには、自分ではなく、読者を主人公にする。

読者が、今どんな壁にぶつかっていて、どんな未来へ進みたいのか。

その旅を支える言葉を書いていく。

僕は、これこそがストーリーテリングを文章に活かす本質だと思っています。

今日の最後に、一つだけ問いかけさせてください。

「あなたが今、誰かに伝えたい経験には、どんな変化の物語が隠れていますか?」

ぜひ一度、考えてみてください。

もしかすると、あなたにとっては何でもない経験が、誰かの背中を押す言葉になるかもしれません。

文章を磨きながら、人を知る。

人を知りながら、自分の言葉を磨く。

五つ星文章術。

今回は「人は『説明』では動かない。『物語』で動く」というテーマでお話ししました。

最後までお聴きいただきまして、ありがとうございました。

宮本真愿でした。

それでは、また次回お会いしましょう。

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