1つの文章、1つの出口という文章設計
「選べるほうが親切」は、文章では逆効果になることがあります。
人は選択肢が増えるほど、動けなくなるからです。
「全部紹介したほうが親切ですよね?」
マーケティングの現場で、ときどき聞かれる質問です。
- 商品が5種類ある
- サービスも複数ある
- 特典もたくさんある
だったら「全部見せて、好きなものを選んでもらったほうが親切ですよね?」
たしかに、一見するとその通りです。
でも、人間の心理はそんなに素直ではありません。
選択肢が増えるほど、選べなくなることがある。
行動経済学や心理学では「選択のパラドックス」と呼ばれる考え方です。
「選べる」は自由。でも「選ばなければならない」は負担
たとえば、レストランに入って、メニューが3種類しかなければ「じゃあ、これ」と比較的すぐ決められます。
ところが、100種類の料理が並んでいたらどうでしょう。
「これもいいな」
「いや、こっちかな」
「待てよ、さっきのほうが……」
楽しいはずの食事なのに、注文する前から脳内会議が始まります(笑)
選択肢が増えるということは、自由が増えるだけではありません。
比較する項目も増えるということです。
そして比較には、脳のエネルギーを使います。
発信でも、同じことが起きている
これは商品選びだけの話ではありません。
文章でも起こります。
たとえばSNSの最後に…
「いいねしてください」
「コメントしてください」
「フォローしてください」
「プロフィールも見てください」
「メルマガにも登録してください」
「無料レポートも読んでください」
と並べる。
書き手としては「せっかくだから全部案内しておこう」なんですよね。
気持ちはものすごくわかります。
せっかく読んでもらったんだから、全部盛りにしたくなる(笑)
でも読者側からすると「で、結局何をすればいいの?」となる。
結果、何もしない。
これが一番もったいない。
人は「興味がない」から動かないとは限らない
ここは、とても重要です。
読者が行動しなかったとき…
「興味を持ってもらえなかった」
「文章が刺さらなかった」
と考えがちです。
でも実際には、興味はあった。でも、次に何をすればいいかわからなかった、というケースがあります。
つまり、文章で人を動かすには「欲しくさせる」だけでは足りません。
「迷わせない」ことも必要なんです。
僕が意識している「出口は一つ」
LPでも、メルマガでも、SNSでも、僕は文章を書くときに「この文章を読み終えた人に、次に何をしてほしいのか?」を先に決めます。
- 無料レポートを読んでほしいなら、無料レポート
- 商品ページを見てほしいなら、商品ページ
- コメントしてほしいなら、コメント
基本的には、一つの文章に、一つの出口。
これだけでも文章はかなり強くなります。
CTAは「お願い」ではなく、案内標識
マーケティングでは、読者に次の行動を促す言葉をCTA(Call To Action)と呼びます。
「詳しくはこちら」
「無料で読む」
「申し込む」
などですね。
CTAというと「読者を動かすテクニック」のように聞こえるかもしれません。
でも、僕は少し違う捉え方をしています。
CTAとは、読者を無理やり動かすものではなく、迷子にさせないための案内標識だと思っています。
山道で…
←山頂
→駐車場
と書いてあれば迷わない。
ところが…
←山頂
→駐車場
↑温泉
↓売店
↗絶景スポット
↙おすすめランチ
と一度に出てきたら「で、どこ行くんだっけ?」となる(笑)
文章も同じです。
「伝えること」を減らす勇気
文章を書くと、どうしても足したくなります。
「あれも伝えたい」
「これも知ってほしい」
「せっかくだから、これも……」
でも、文章力が上がってくると、逆のことを考えるようになります。
「何を書かないか?」です。
伝えたいことを増やすより、読者にしてほしい行動を一つに絞る。
これは情報不足ではありません。
むしろ、読者の脳の負担を減らす親切です。
「たくさん伝える人」より「迷わせない人」になる
五つ星文章術では、文章を「うまく書く技術」だけでは考えません。
- 人間の脳がどう情報を処理するのか
- どんなときに迷うのか
- なぜ「欲しい」と思っても行動できないのか
そこまで考えて文章を設計します。
なぜなら、文章の目的は、読者に情報を全部渡すことではないからです。
必要な情報を、必要な順番で渡し、次の一歩をわかりやすくすること。
だから今日、自分のSNSやLP、メルマガを一つ開いて確認してみてください。
読み終わった人に「これも、あれも、それも」とお願いしていませんか?
もしそうなら、一度削ってみる。
そして最後に残すのは「この文章を読んだ人に、次にしてほしいことは何か?」
たった一つ。
文章は、たくさん伝えたから人が動くのではありません。
「次に何をすればいいか」がわかったとき、人は動きやすくなります。


